4. もう一つの物語 パラグラフⅣ:或は真実の物語

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「……………………」 「払うもん払ってもらって約束を反故にさえしなきゃ、アンタらの事情なんて俺たちにはどうでもいいことだ。  ただ……解らないんだけどさ、何でわざわざそこまでするのかってこと。そんなタマだったっけ、アンタ?」 「おまえの中でどんな括られ方をしているんだ、俺ぁ?」 「……そうだなぁ。お巡りの皮を被った人でなし、とか?」  染谷は会議テーブルについた両腕の先で両目を揉み解しながら、はぁ~と大きなため息を吐く。 「ったく、どいつもこいつも自分一人で大きくなったみてぇによぉ……」  由宇次郎はお茶の入った湯呑みを両手で包み込む。 「新しい人生が平穏かどうかなんて、誰にも分からないって言ってんの。  敏腕捜査官の依頼とはいえ、“一般人”をどうにかするのは、俺らにとっても前例がない。  その分難しいと言わざるを得ない。ただ“いなくならせる”だけじゃすまないからね」
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