4. もう一つの物語 パラグラフⅣ:或は真実の物語

142/172

72人が本棚に入れています
本棚に追加
/965ページ
「俺がしてやれることは、せいぜいがアウトライン作り。しかも、別人として生きるって意味においては潜入時と何ら変わらない。  どんなケースでも、過去が新しい人生の障(・・・・・・・・・・)害にならないようにする(・・・・・・・・・・・)のは鉄則だけど、時をかけて築き上げた関係はすべてリセットしなきゃならない。  その意味に限れば、より過酷な状況と言えなくもない。  当人のよほどの強い意志と周囲の協力がないとさ……」 「“当人の強い意志”ね」 「なによ?」 「何でもねぇよ。確かに本人の意向は重要だ。それについてはだから、見つかった後に慎重に対処する。  だがどうだ? コイツみたいに使い終わったらすぐさまゴミ箱にポイされるのと、たとえ今までとは使われる場所や相手が違っても、オイルを補充され、てめぇの役目をきっちりこなすことで、長きに渡って大切にされるのとどっちが幸福か……幼稚園児でも分かるってもんだろう?」
/965ページ

最初のコメントを投稿しよう!

72人が本棚に入れています
本棚に追加