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使い捨てライターを手のひらでもてあそび、自嘲の混じった笑みを浮かべる染谷に、クッと口端を持ち上げた由宇次郎が茶々を入れる。
「うら悲しきは、閑職にまわされたオッサン刑事の追憶かな」
「何とでも言え」
「――おまえは、
少なくとも今は………そこそこ幸せだろう?」
由宇次郎がふっと微笑む。
だがそれもつかの間、そうしなければ礼を失すると言わんばかりに毒舌をふるう。
「昔なじみにパクられて幸せを感じるヤツがどのくらいいるのか、俺としてははなはだ疑問だけど?」
「自業自得だろうがっ! 俺のヤマを散々台無しにしてくれやがって」
「ハハ、しかたないじゃん、依頼されたんだから。こっちも商売だし……ねぇ、やっぱ一本ちょーだい」
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