4. もう一つの物語 パラグラフⅣ:或は真実の物語

144/172

72人が本棚に入れています
本棚に追加
/965ページ
 エリが僕たちを迎えに品川臨海区西分署に着いた時、時計はすでに午後7時をまわっていた。  廊下の長椅子に真宮と二人並んで座っていると、天井の蛍光灯の少し薄暗い光が、自らの意志で肉体から剥離したみたいに見える影を、白鼠色のリノリウムの床に黒々と染み込ませる。 「肉、しばらく食えないな」  真宮がぼそりと言う 「ああ」 「てか、もう何も食える気がしない」 「ああ」 「脳みそ……飛び散ってたよな」 「やめろよ」 「なのに、腹は鳴ってる」 「…………………」  背中を丸め俯き加減に座る僕らに、事情聴取をしたヒスパニック系の女性捜査官が声をかけてきた。 「大丈夫? リヴァイン捜査官、もうすぐ着くそうよ。良かったらカフェのラテをごちそうするけど?」 「あ~……あ、りがとう、ございます。でも……」
/965ページ

最初のコメントを投稿しよう!

72人が本棚に入れています
本棚に追加