4. もう一つの物語 パラグラフⅣ:或は真実の物語

147/172

72人が本棚に入れています
本棚に追加
/965ページ
 それからきっちり30分後にカフェテリアにやって来たエリは、僕らの座っているデッキ席までドカドカと大股で歩いてきて、隣のテーブルのイスをひょいと持ち上げて僕らの方に寄せると、自分も腰を下ろしてフーっと大きなため息を吐いた。 「やれやれだな。おまえ達、大丈夫か? 見て楽しいもんじゃないからな、どんな状況にしろ」 「エリ」 「ん?」 「本当に捜査官だったんだ?」  疑っていたわけじゃないけど、さっきのエリは、僕や真宮が知るエリとは違って見えた……。 「……ああ。何年になるかな、12、13年? おまえらがまだこんま~いガキの時分に辞めたがな」  由宇次郎のこと、その時から知っているんだろうか?  今から12、3年前って言ったら、アイツだって僕らとそう変わらない年の、そう、ガキだったはず。  エリは大きく伸びを一つしてから、僕の頭をわしゃわしゃかき混ぜ「さて、帰るとするか」と言った。  真宮には「おまえはどうする? お袋さん心配してたぞ。良かったな、嫌われてなくて(笑)」  先に連絡してくれたんだ。真宮もボリボリ頬を掻いて笑っている。  エリがいてくれて本当に良かった。
/965ページ

最初のコメントを投稿しよう!

72人が本棚に入れています
本棚に追加