4. もう一つの物語 パラグラフⅣ:或は真実の物語

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 分署の防弾ガラスの嵌まった半円形のエントランスまで、ズズ~とラテを啜りながら歩いて来ると、エリが“カリーナ”と親しげに呼んでいたさっきの美人捜査官がこちらをふり返った。  緩めに束ねた黒い巻き毛が、その動きに少し遅れて淡い色のパンツスーツの背中にふわりこぼれ落ちる。  腕組みしたまま何とも複雑な表情を浮かべた彼女は、僕らを認めるとサッと笑みを作り直した。 「やっと帰れるわね。引き止めてしまってごめんなさいね」 「大丈夫ッス。署内に入ったの初めてで、けっこう楽しめたし」と真宮。 「そう? それなら今日のことは終わりよければすべて良しってことでいいかしら?」 「しばらく肉ももんじゃも食えないけど(苦笑)」 「クスクス、いい対処法を教えてあげるわ。明日にでも肉ももんじゃも思いっきり食べるの。避けてると一生食べられなくなるわよ」
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