Ⅰ. もう一つの物語 パラグラフⅠ:22年前、襲撃

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「森の中に遺体を発見。一味のひとりかと。害獣用の罠にかかったところを撃たれたようです。  至近距離から5発――上腕・大腿部に各一発ずつ、最後に眉間を撃ち抜いている。いたぶって殺してますね」 『梶井か……(口を割らせるためとはいえ)なかなかどうしてエグイことしやがるじゃねぇか』  しかし、たとえ梶井が犯人から何らかの情報を得ていたとしても、肝心の本人があの状態では、染谷にそれを知る術はない。 「クソったれ」  吐き捨てるように言ってみたものの、事態が変わるわけでもなく。 「薬莢を捜します」 「どこにトラップがあるか分からんぞ。気をつけろ」 「了解」 「こちらにも一人発見! クロスボウの矢が首元から喉へと貫通してます……幹の高い位置に感知器が取り付けられているようです。  侵入者がエリア内に入るや、反応して矢が放たれるしくみです」 「成功率は五分五分ってところですかね。致命傷を負わせるか、時間稼ぎの足止め目的かにもよりますが……」 「主任! 梶井容疑者に射殺された男から数メートル付近にピストル弾が複数撃ち込まれた幹を発見。仲間の絶叫を聞いて慌てたんでしょうか、闇雲に撃ったようです」 『トラップに掛かった二人が斥候役の両サイドなら、センターを担う人間がもう一人いたはず。撃ったのはそいつ(ラリってる奴)で、唯一の生き残りってわけだ』 「……分かった。室内班を応援に回すから、弾と薬莢の回収に全力を注いでくれ」
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