4. もう一つの物語 パラグラフⅣ:或は真実の物語

153/172

72人が本棚に入れています
本棚に追加
/965ページ
 翌日の朝、TVをつけたら、昨日の事件がニュースのモーニングフラッシュ枠で報道されていた。朝刊の扱いもそれほど大きくはない。  あの“瞬間”を見ていた僕らからすれば、メディアの対応が思いのほかクールで逆に驚いた。これが当事者と傍観者の“温度差”なのだろうか?  真宮と二人で、エリに作ってもらった朝メシを突きながら、ニュース番組をザッピングした。 「どこも大した報道してないな」 「だな」  真宮がレタスをもしゃもしゃさせながら言うのに、画面を見たまま短く応える。 「アレ、間近で見たらかなりの衝撃なのにな。自殺じゃ事件性がないってことなんだろうか?」 「かもな」 「真宮ー、おまえ家に連絡したのかよ、ちゃんと?」 「ああ? したよ、昨日の夜に。『あ、そう。なら、もう帰って来なくてもいいわよ』だって。誰が心配してるって!?」
/965ページ

最初のコメントを投稿しよう!

72人が本棚に入れています
本棚に追加