4. もう一つの物語 パラグラフⅣ:或は真実の物語

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 “城”(パノプティコン)18階会議室―― 「主体的創造!?」 「そ」 「本来、生物にとっての究極の自己表現=創造は、“生きること”そのものだ。  人間以外のほとんどの種は、存続と繁栄を主目的とした生をまっとうすることで、一生涯をかけた創造――芸術活動を完結させる。  いっぽう人間はというと、生きることはもはや無意識下の行為に成り下がり、男女の営みは種の存続や繁栄と直接結びつかない、快楽の追求にひた走ることもままあるわけだ。  言葉を解し、高度なコミュニケーション能力と思考力を持つ人類――礼賛してきたのはほかでもない人類、つまり自画自賛なわけだけど――ほかの種と比較して、飛び抜けて高度な能力を持っている(と思っている)反面、生物界全体からみれば、生得的能力を自ら破損させた奇妙な生き物でもある。  ずっと昔、某心理学者が言っていたように、人間は本能が壊れた動物だから、ただ生をまっとうするだけでは、種の存続を図るだけでは、己の存在意義や価値を見出せなくなったわけだ」
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