4. もう一つの物語 パラグラフⅣ:或は真実の物語

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「だが、面子を潰された重犯課と薬取課は、直後から数日連絡が途絶えたノアに疑惑の矛先を向けた。  奴が二重スパイだったんじゃないかってな。誰が言い出したか知らねぇが、そういうこと(・・・・・・)になっちまった。  連中は聖心ファーマーシーの違法行為を暴くより先に、ノアの足どりを追うことに躍起になった。  あとになって思い違いだったと判明し、表面上は元鞘に納まったわけだが、」  ノアは海外逃亡した聖心ファーマーシーの管理職員らの行方を、独自のルート(・・・・・・)を使って追跡していた。  インターポールおよびその他の機関の協力を得て、三人の身柄拘束に成功している。失態の挽回というより、諜報員としてのプロ意識がそうさせたのだった。 「警察組織ってぇのはもともと身内意識が強い。よそ者の、しかも、時として警察機構と相容れないやり方も辞さないノアに、一時的とはいえ不信感が募ったことで、以前にはなかった見えない壁ができちまった。ノアはそれを敏感に感じとっていたはずだ」
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