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店の前に真宮が来た。僕と目が合うと、右腕にはまった超小型モジュール端末を、指で示して急かす。
AIが――僕のはフロックC_arykって名だ――彼が、これから行くならできるだけ急ぎなさい、でないと目標を達成できない、そうおっしゃっておられる……その情報を、僕と真宮で共有している。
かつて、そこにはめられていたのは腕時計だった。現在はウェアブル・マシンにその地位を奪われている。
国民全員に義務づけられた、個人に関する全情報を網羅したその小機器は、今やありとあらゆるものにつながっている。
家や車のキーはもちろん、ID、クレジットカード、お店の会員証、SNSやその他もろもろのログイン情報、ネットショップでの買物履歴にTVの録画予約情報、健康診断結果と生活改善指導、既往歴、近い将来罹りそうな病気と予防策、おくすり手帳などなど、すべてがこの端末によって管理されている。
勝手に外すと即、国家反逆予備軍として公安が登場する……らしい。アメドラに出てくるGPS機能付きリングと同じだと思えばいい。
いろいろ窮屈そうだって?――うん、そうだね。でも、これでも少しマシになったんだよ。当初の構想では、ウェアブルではなくインプラントを想定していたから。
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