4. もう一つの物語 パラグラフⅣ:或は真実の物語

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【ここへきてまたぞろ、あるファイルの存在が取り沙汰されている――いわゆる要人暗殺リスト『ノックスファイル』についてだ。  数年おきに浮上するファイルの存在の有無に関連し、実行部隊(暗殺部隊)はNSC諜報部とする巷説が、またもや繰り返されている。  陰謀論者のあいだでは、議論の余地のない決定事項だそうだ。だが、それを裏付ける証拠は何ひとつ提示されていない。  結論ありきの論はまるでパッチワークのようで、流麗さに欠ける。自説にこだわり過ぎるあまり、主張が形骸化していることにそろそろ気づくべきではなかろうか】  そうした内部的悶着から2年2ヶ月後の昨日――4月X日午後4時20分頃、浄化処理施設近くの未完成橋の先端、橋桁だけが虚しく宙に突き刺さる、少年少女が浮遊する場所(・・・・・・・・・・・)で、マクマナス・ノア捜査官は自身の所有するベレッタM92で下顎を打ち抜き死亡――。 「公式には過重ストレスによる衝動自殺として処理される。間に合わなかったな……」    最後の台詞は独り言のようだった。
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