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メンバーは闇に溶け込めるよう黒いつなぎに身を包んでいる。襟足のあたりと手首足首まわりに認識用に蛍光パッチが縫い付けられていて、夜を蠢くその姿は見ようによっては星の瞬きに似ているかもしれない。
後部座席では腹を満たしたザックが、疲れきってぐっすり眠っている。
音を立てないよう細心の注意を払って、染谷は車内に滑り込んだ。時刻は午前1時をまわっている。我らが支配者は、コンマ一秒の情け容赦すらかけてはくれない。
“掃除”が完了し、英国へのリポート(染谷の仕事だ)が完了した時点で、今夜のことは忘れなければならない、関わった全員否応なくいっせいに。
染谷自身を含め、作業にあたっているメンバー全員がそれを了承している。
『そうは言ってもなぁ……』
何にも興味を示さない人間なぞいるはずもない。いるとしたらそれは、生きながら死んでいるも同然なのだから。
「でも、大丈夫かな?」
「……大丈夫かって、何が?」
まるで染谷の思考を読んだようなタイミングで放たれた問いにすぐに反応したのは、声の主がザックだと思ったからだ。
長い間が、ミラー越しに後部座席の様子を確認させる。
ザックはぐっすり眠っていて、ピクリとも動かない。反射的に後ろを向く染谷。
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