5. Aftereffects Ⅴ

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 点検日には毎回必ず二、三人、ゲートで引っかかる(・・・・・)者が出てくる。これもある意味、見慣れた光景。みんなチラリと見ただけで、すぐに自分たちの会話に戻っていく。  校内の制御システムを総点検するという名目で、ついでに(・・・・)不穏分子を炙り出し連行していくのだ。  そういう連中のなにが不穏なのか具体的にいっておくと、こういう世の中だから、高校生といえども危険な活動に染まる輩はいっぱいいて。  A.I.リング全廃推進委員会なぁんていうのも、昔から存在する反政府組織の一つで、現実的じゃない運動を必死にやっている現実的じゃない奴らの代表格――なんだよね。  一瞬だけ、引きずられていくあの女生徒をよもや川東結花かと思ってしまった僕。真宮も同じだったらしく、ホッと胸をなで下ろしている。  おたがい顔を見合わせて、バツの悪さを笑ってごまかす。 「私だと思った?」  ふいに聞こえてきたのは、風邪でも引いているのかやけにハスキーな川東結花の声だった。
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