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川東結花が心酔してやまない作家――図書館で彼女に自らが所有するプリント版を貸してくれた人物とは――なにを隠そう僕らの宿敵、赴任してまだ間もない司書兼国際資格保有アーキビスト兼作家(New←今ココ)の梶井由宇次郎だった。
「あなたのほうは……ビックリするくらい何にも知らない(憶えてない)のね? なんのためのウェアブル?」
川東結花はそう言ってせせら笑った。るっさいわ! この娘ってホント、人を怒らせることにかけちゃ天才だよな! そう思った瞬間だった。
キィィィーンという不快音が頭のなかに鳴り響いた。両耳が圧迫されていく。
僕の頭のなかは――…………イヤ、そうじゃなくて…………
僕自身が不快な音それ自体に成り果てたような…………
僕という肉体は失われ、意識だけがそこにいるような、気持ち悪い感覚に支配されている。
なんだ、これ……
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