3. もう一つの物語 パラグラフⅢ:14年と5ヶ月前:“her”

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 なぜこんな目に遭っているのだろう? 私の貢献度・実績は研究所の誰よりも高かったはず。  なのにいったいどうして――  長いこと考え、問い続けているけれど、答えは見つからない。  でも! 誓ってこのままで終わらせやしない!  私をスケープゴートにし、このような不遇を舐めさせたすべての人間に同等の不幸を!  私を陥れたヤツらに同じだけの、いいえ! それ以上の不幸を!  形ばかりの聴聞会が来月開かれる。集まるのは支援会のメンバーと“ファン”。  支援会は頑張ってくれている。彼らには感謝している。けれど、彼らでは私を救うことはできない。  たとえ自由を勝ち得たとしても、それだけでは救われないと分かってしまっているから。  聴聞会にあわせて支援団体が解放した掲示板に、面白い書き込みを見つけた。使えるコマかもしれない。  焦ることはない。虚雨に濡れそぼした歳月を思えば、どれも些事。 「10010、ファンから手紙だ」  啓示、来たり。
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