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〈さっき捨てたものと似たような内容なのに、なぜこちらは必要? きみの欲しい情報とは主旨が異なる〉
〈アディ、それはまったく関係のない資料だ。きみがいま調べているのは東京の近代史であって、映画100年史じゃない〉
ってな具合にね。
もちろん、彼は学んださ。でも、おそらくだけど、解ったフリをしているだけだと思う。
なぜって、僕が資料を吟味中にふと思い立って、コミックスを保管している箱を棚から降ろして中身を漁りだしたら、彼がこう言ったんだ。
〈やれやれ、また脱線……どうもきみは集中力に欠けるようだ〉
僕は一瞬固まってしまった。だって、フロックCが言った〝集中力に欠ける云々〟っていう物言い、夕飯のとき父さんと一緒に視たTVドラマの科白と一字一句違わなかったから。
彼は、TVドラマの科白が、不可解な僕の行動のゆらぎに合致すると判断し、それを憶えて真似てみせたのだった。
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