72人が本棚に入れています
本棚に追加
冗談めかしてそんなことを言うドッグはきっと、僕をからかっているんだろう。
真宮はたぶんそう思っている。
〝おまえって妙なところでクソ真面目だよなぁ。女子に対しては不実もいいとこなのにさー〟いつも言われている科白。
当たってるから別にいいけど、でも、ドッグのこの掴みどころのなさは、僕を不安にする……。
「おいー、そんな深刻に受け取るなってー。冗談だよ、冗談(笑)。
それよかさ、おまえらは、今いる世界が本当に自分のいるべき世界なのかどうか、思い悩んだりすることってあるか?
俺はたまにある。俺の本当の居場所はどこか別の処にあって、何かの間違いで此処に送り込まれているんじゃないか、もしそうだとして、俺はどこの誰で何のためにこの場所で生きているのか――考えているうちにだいたいは酔っぱらって寝ちまうんだがな」
「アンタがそんなん考えるってほうが俺はオドロキ。でもそれって現実逃避ーって言われるんじゃないの?」
真宮がトリプルベリー・ヨーグルト・シェイクをズズズーとすすり上げながら言うと、
「逃避……常套句だな、ま、否定はしないが(笑) 俺がいま言ったのはそれとは少しニュアンスが異なるんだ」
最初のコメントを投稿しよう!