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怪訝な顔で真宮を見返す川東結花。バッグのファスナー口を広げて、いままさに本をしまい込まんとしている彼女の右腕を、真宮ががっちりホールドしているのだ。まるでそこで時間が停止してしまったみたいに、誰一人つぎの行動に移らない。
「――真宮?」
最初に口を開いたのは僕だ。そしてその直後に、
「なによ?」と川東結花。まぁ、想定内の反応だ。
「なによ!? 何なの? 離してよ!」
うんうん。いきなりソレっておまえにしては大胆過ぎるぞ、真宮(笑)。
「あ、ゴメン。悪かった。その本の作者ってもしかして……」
目ざとく何かに気づいたヤツの指摘に、僕も川東結花の手元を注視しようと身を乗り出した。
裏表紙が手前になっていて、背表紙の真ん中らへんよりちょっと下方をつかんでいる川東結花の手が邪魔になって、なにも見えない。
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