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「ん? おい、生存者だ」
エリザさんの声に向き直ると、呆然と座り込む少年の姿。
「君、大丈夫?」
僕が語り掛けると、少年はゆっくりとこちらを向き、口を開いた。
「ママ、死んじゃった」
それだけ。ただそれだけの言葉に、計り知れない重みがある。
動けない僕の肩を叩く手はエリザさん。
「もうすぐマキナが来る。それまでにトリアージを進めよう」
トリアージ……患者を緊急度合いによって色分けし、治療の指針にすることだ。
死亡した者には黒、即座に処置しないと生命が危ぶまれる者には赤、そこまで切迫していない者には緑で印をつける。
気が進まない仕事だが仕方ない。
僕はしゃがみこみ、負傷者の選別を始めた。
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