第七話:偏愛と妄執

4/12
前へ
/178ページ
次へ
「マキたんの殺害と性的暴行に、道化師は一切手を下していなかった。だけど道化師が唯一具体的に指示したところがあったんだ」 「ほう、それはなんだ?」 エリザさんの返答に、紫苑さんが赤ペンを取り出す。 「マキたんの身体にナイフを差し入れる位置、だよ」 紫苑さんの言葉に、エリザさんが目を見開く。 「あいつはマキたんの身体に印を付け、ここにナイフを刺せと指示していた。あの場所はね、ちょうど内臓や急所から外れる部分……つまり、マキたんを殺さずに苦痛を与え続けられる部分なんだよ」 「そんな……」 紫苑さんの言葉に、僕は驚愕。 「内臓の位置は誰でも大体同じだけど、体型などによって僅かな個人差はある。道化師はマキたんの臓器の位置を正確に把握していたんだ」 「そんなことを知っているのは貴様くらい……というわけか」 紫苑さんは、唇を噛みながら首肯した。
/178ページ

最初のコメントを投稿しよう!

69人が本棚に入れています
本棚に追加