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「この部署はリョウコが作ったのだ。私もマキナも、もともとは親元で育つことができずにリョウコに保護された人間なのだ」
「そうだったんですね……」
エリザさんの言葉に、僕は思わずため息。
辛い過去があるからこそ、クズが善良な人間をいたぶる事件を許せないのだろう。
世の中には、どうしようもなく理不尽なことが多すぎる。
それを少しでも正したいと心から思っているからこそ、命をかけられるのだ。
「マキたんは、最後の最後まで君のことを呼んでいたね。君はまだ会って間もないのにマキたんからよほど信頼されていたようだ。全く、嫉妬するよ」
「いえ……その声に応えられなかったのですから、どうしようもないですよ」
紫苑さんの言葉に、僕は目を伏せる。
マキナさんはこれから、もっともっと幸せになるべき人だった。
たくさんのことを経験して、たくさんの笑顔を浮かべるはずだった。
それなのに……
「その怒りは、僕も同じだ。マキたんの無念は絶対に晴らす。できる限りの協力はするよ」
「ありがとうございます……」
僕は紫苑さんに一礼。
エリザさんは、既に帰り支度を始めている。
だが次の瞬間、彼は気になることを口走った。
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