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-恨みを晴らしましょうー
僕、辰野実祈の通う、私立大井緑高等学校に、最近妙な噂が流れているらしい。
それは、ここ2-Bのクラス内どころか、もうこの学校内で知らない人はいないって話だった。
「って、お前知らないのかよ」
でも僕は、隣の席のクラスメートに聞くまでは、そんな噂は一ミリたりとも知らなかった。
彼の話によると、どうも高校生限定で恨みを晴らしてくれるサイトがあるという。
更にその限定は、同じ学校に通う生徒同士である事。それを満たせば、学年は問わない。
「ただな」
彼は、何故かそこから小声になった。
「一度そこにアクセスすると、自らの本名と、相手の本名も書き込まなければ、自分が消されるって話だ」
「またまた、そんなの、あり得ないって」
僕は大袈裟に手を振ってみせたが、彼は更に真顔になった。そして蚊の鳴くような小さな声で教えてくれた。
「1-Dの南って奴、最近学校に来てないんだよ」
学年は違うけど、なんとなくその子の事は分かる。
「噂では、そこにアクセスして、途中で怖くなって、何もせずにログアウトしたって話だぜ」
僕は少し考えた。消されるって、具体的にはどういう事なんだろう。
もしかしたら、その子はただ引っ越しただけかもしれないし。
僕がそう言うと、彼は一息ついた。まだ信じないのかって顔だ。
「因みにな」
彼は、僕の耳元に手を添えて、その口を近付けて言った。
「急にいなくなったことを、担任は何も説明しないし、おまけに、そいつの住んでた家、今は空き家なんだぞ。引っ越したなら、担任だってそう言うのが普通だろ」
僕は、咄嗟にその手から離れるように体を起こすと、そのまま彼の方を見て言った。
「ちょっと、脅かさないでよ。また、いつものように揶揄ってるんでしょ」
「じゃあ、誰かに聞いてみろよ。みんな知ってんぜ」
僕はそれ以上聞きたくなかったけど、彼は意気揚々と色々教えてくれた。
噂の出所が、学校裏サイトであろうって事。
そのサイトは、どうやら東海三県限定らしい事。
だからここ、岐阜県の飛川市に一つしかない私立高校もその範囲内という事。
でも、特に恨む様な人もなく、いわゆるアニオタな僕には、正直どうでもいい事だった。
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