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ティータイムの会話の内容は、おもに互いの学校生活のことが中心となった。
幸生は隣のクラスのヘンリーに絆されて結局映画研に入ったこと、桜のほうは新たな環境での出来事。
「で、結局桜はどの部活にも入ってないのか」
「うん。なんか、そういうのにあんまり興味ないし」
ただ、互いの近況などを話そうにも、その程度のことはいつもLINEでやりとりしてる。時折は直接通話もする。なのに、こうして直に顔を合わせていると、互いのどこか余所余所しいさまが垣間見えてしまう。
加えて肝心の部分は、桜も幸生もどこかで曖昧に避けている。そんなどこか歯痒いやりとりが言葉の端々に滲み出る。
久しぶりの桜と幸生の再会は、なんだか妙にぎこちなかった。
気恥ずかしさでもない。照れくささとも違う。
この感情は何だろう、と幸生も桜も心の片隅で思った。
テーブルの上の菓子も片付き、ひと息吐くと、桜が言葉をかけた。
「幸生くん、このあとどうしよっか」
「映画……と言いたいトコだけど、きょうは少し桜の住んでるこのあたりを見てみたいな」
「宿は?」
「夜までにチェックインすれば大丈夫」
とは云え、あまり遠出もできそうにない。
一寸の思案の末、桜が提案した。
「じゃあ――‘だいぶっつぁん’に行ってみよっか」
相談の末、大仏と古城公園を見て回ることを決めた。
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