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「本当に?」
「ああ、俺が保証する。いつかは、お前の心のモヤモヤも消えてくれる。だから、今はヤスナを信じて待つんだ」
「うん、わかった」
そう言うと、ベルは大きく伸びをした。晴れ晴れとした表情で、俺を見る。
「アレク、ありがとう。ちょっとだけ、気分がすっとしたよ。あたし、あいつを好きになるよう頑張ってみるね」
ベルは、長い尻尾をくねらせながら去って行く。仕方ない奴だ。もっとも、ベルの悩みは飼い猫なら誰しもが経験するものだからな。自分なりの解決法を見つけるしかない。
ちなみに勘違いされては困るが、俺は本当に悩まなかったからな。ぜんぜん悩んでない。マコトが誰と仲良くしようが、ほんのひとかけらも気にしないぞ……負け惜しみじゃねえからな!
俺はふたたび、草の中でまどろむ。すると、またしても誰かが来やがった。
誰かと思えば、隣の家の三毛子じゃねえか。
「何だ三毛子、お前も何か相談か?」
俺が顔を上げると、三毛子はすました様子で近づいて来た。
そっと俺の背中の毛を舐め始める。
「アレク、お疲れ様。ボスは大変ね。こんなことくらいしか出来ないけど、あたしからのプレゼントよ」
言いながら、俺に毛繕いをしてくれる三毛子。こいつの毛繕いの腕は、絶妙なのだ。俺は思わず目を閉じる。
「いつもお疲れ様。あんたがいるから、この町の猫は平和でいられるのよ。これからも、町のために頑張ってね。あたし、応援してるから」
毛繕いをしながら、優しく語りかけてくる三毛子。俺は眠気に襲われ、いつの間にか眠りこんでいた。
どんなにボスが偉くても、女の癒しにゃ敵わないんだぜ……。
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