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「あ。もしかして、ナンパ!?」
「あ、ああ」
「ひゃ~、おじいちゃんやるぅ!」
若い時の写真を見せてもらったけど、真面目で爽やかな好青年って感じで、とてもそんな風には見えないのに。
「いや。ええと…。私から声をかけたのではなくて…」
「えぇっ。しかもアプローチはおばあちゃんから!?」
まさかの逆ナン!?
「え?え?なにそれ。そんなの初耳なんだけど!」
私は身を乗り出しながら叫んだ。
「そりゃあ、今まで誰にも言わなかったから……」
「だったら最初からきちんと説明して!まさかこんな中途半端な状態で終わりにしたりしないよね?」
「……話すと長くなるよ」
「いいよいいよ。時間はたっぷりあるんだし。ぜひとも聞かせてよ」
そわそわもじもじしてから、おじいちゃんは観念したように口を開いた。
「それじゃあ……時は約70年前、2019年まで遡る」
その様子を眺めていた私は思わずドキリとする。
普段も充分、年の割には滑舌の良いおじいちゃんだけど、さらに口調が快活になり、表情も精悍になったような気がしたから。
まるで約70年前の、若かりし頃の、黒須三太さんがタイムスリップして来たかのようだった。
「その日はクリスマスイブ。おばあさんはイルミネーション輝く都会の雑踏の中、こんな事を考えていたらしい……」
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