時の公約数

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 光よりも速いスピードで星に近づいて、やがて自動制動が働き、ゆっくりと大気圏に突入する船。それに随伴して電磁波測定器の指針が大きく触れ、測定器はプシュウと情けない音を上げて停止してしまいました。どうやらこの星からは、とてつもなく強い電磁波が発生しているようです。  エメラルドグリーンの地表が見えてきた辺りで、船は轟音を立てながら空気圧を下方に噴射し、激しい振動と共に、砂煙を巻き上げながら着陸しました。  メーターを見ると大気は適応しているらしいので、僕は宇宙服のヘルメットだけを被り、ハッチから地上に降り立ちます。    そこではうぐいす色の砂が地を覆い(地表がエメラルドグリーンに見えるのは、恒星との関係だろうか?)、荒涼と呼ぶにふさわしい景色が広がっています。えらく凹凸のある地面に、あたりを囲む小山。他にあるものと言ったら、自分の船くらいでしょう。  さて、どうやって遭難者を探そう?──そんなことを考えていると、凹んだ地表の先からうめき声が聞こえてきました。  急いで声の方へと駆けつけると、地にのたうち回る男性の姿が見えてきました。男性はパッと見20代くらいの金髪白人で、大きい図体の持ち主です。   「大丈夫ですか?」僕が小型の医療用キットを手に取り、男性の元へ近づくと、男性は激しい剣幕で「俺に触れるな!」と怒鳴りました。僕はビックリして、差し出そうとした手を慌てて引っ込めます。  男性はしゃがれ声で「いや、すまない」と詫びつつも「だが今は触れないでほしい」と主張しました。
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