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「ブレンドのMと、フレンチトーストのブルーベリーソース」
目の前に立つ直輝は、万葉よりも十センチ以上背が高い。百八十センチを超えていそうだ。黒いTシャツの上に濃いグレーの半袖シャツを重ねた服装といい、ぶっきらぼうな態度といい、およそ、女子力の高いスイーツのイメージとは程遠い。警察官の指に水玉パステルカラーのバンドエイドが貼ってあるのを見てしまったくらいの意外性がある。
「なあ」
つい、その背中をつついてしまった。
「ん」
「フレンチトースト、一口味見させてもらっていい?」
内緒話のように声のボリュームを落とす。
「自分で頼まないのか」
さすがにそれは恥ずかしい、とは言えなかった。
万葉は甘党なのだが、高校に入った頃から、外でパフェやケーキを注文するのを避けるようになっていた。中性的な自分の外見と名前がその頃からコンプレックスになっていて、少しでも「男らしく見られたい」なんて見栄を張ってしまうのだ。
「とりあえず味見して、美味かったら次は頼んでみる」
ちゃっかりとした万葉の返答に、直輝は笑いもしなかったが気を悪くした風もなかった。そして、生クリームとフルーツソースがたっぷりかかった一切れを、かなり気前よく分けてくれた。
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