§3

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 餌付けされた感は否めないが、それでも素直に、カッコいい奴だな、と思った。  愛想笑いに頼らなかったり、人からどう思われるかを気にせず食べたいものを注文できたりするのは、素の自分に自信があるからだろう。少し、いや、かなり羨ましい。  男前だから堂々としていられるのか。それとも、堂々としているから男前なのか。  いずれにせよ、初めて言葉を交わす万葉の前でも、直輝がごく自然体でいるのは伝わってきた。彼の方から積極的に話しかけてくるわけではない。だが、会話が続かなくて気まずくなるということもない。簡潔だが的確な返事をして、その流れで同じ質問を返してきたりするので、会話がぶつ切りにならない。  そんな直輝を相手に万葉はいつの間にか、これからサークルの会合に行かなくてはならないのだが、なんとなく気が進まないのだということを打ち明けていた。 「なんかさ、高尚すぎるんだよね」  直輝は黙って万葉の話を聞いている。顔をじっとこちらに向けたままで、真剣に話を聞いてくれているのが伝わってくる。 「俺さ、映画はB級ホラーとか、下品なジョークのオンパレードのコメディとか、ツッコミどころ満載だけどスカッとするアクションとか、そういうの好きでさ。でも、サークルはそういうノリと違うんだ」     
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