§4

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 声が裏返ってしまった。 「いや。久しぶりに呼ぶから、ちょっと発音の練習な」 「語学かよ!」  間髪を入れず突っ込むと、直輝の気配がふっと柔らかくなった。  表情はほとんど変わらないのに笑っているのがわかる。  俺、こいつのことよく知ってるんだ、と初めて実感する。きっと、これまでに数えきれないほど同じようなやり取りをしてきたのだ。  万葉は、はっと顔を上げた。 「直輝」  直輝が目だけで、なんだ? と返事をする。 「あの映画、観た?」  間違えてもう一度観ようとしてしまったニューヨークのクリスマス映画のタイトルを口にすると、直輝は表情を変えずに頷く。万葉は勢い込んだ。 「俺の部屋で?」 「ああ」 「俺がじいさんの車のカセットテープの話したら、お前、爆笑した?」  傍で聞いていたらなんのことやらさっぱりわからないだろう。だが、直輝は口角をわずかに持ち上げて思い出し笑いの表情になった。  やっぱりそうだったのだ。あのとき隣にいたのは直輝だった。     
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