446人が本棚に入れています
本棚に追加
その場でぐるりと身体を回した直輝が、万葉の顔をじっと見下ろしてくる。
「な……なんだよ」
「それって、俺の『好き』と同じで合ってるか」
「は? 直輝の、って」
「キスしたい、とか、そういう『好き』なんだけど」
直輝らしい、なんの駆け引きもてらいもない、まっすぐな言葉。
万葉の顔が一気に熱くなった。
「莫迦……お前……」
「やっぱり、違ったか?」
直輝の眉が心配そうにひそめられる。
「ああもう、そうじゃないって!」
一歩後ろに身を引こうとする直輝を、急いで引き止めた。
「なんのために、部屋に入れろって言ったと思ってんだよ」
少しだけ背伸びをして、その首の後ろに手を回す。
「え、万葉」
「目、閉じろって。恥ずかしいから」
ぱちぱちと瞬きを繰り返していた直輝の目が、優しげに細められた。
「そうか。よかった」
火照った頬を、直輝が指の背でするりと撫でる。
「好きだよ、万葉」
「あ。直輝……」
またしても、先を越されてしまった。自分からしてやろうと思った矢先に、優しいキスが万葉のそれ以上の言葉を塞いだ。
最初のコメントを投稿しよう!