§10

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 その場でぐるりと身体を回した直輝が、万葉の顔をじっと見下ろしてくる。 「な……なんだよ」 「それって、俺の『好き』と同じで合ってるか」 「は? 直輝の、って」 「キスしたい、とか、そういう『好き』なんだけど」  直輝らしい、なんの駆け引きもてらいもない、まっすぐな言葉。  万葉の顔が一気に熱くなった。 「莫迦……お前……」 「やっぱり、違ったか?」  直輝の眉が心配そうにひそめられる。 「ああもう、そうじゃないって!」  一歩後ろに身を引こうとする直輝を、急いで引き止めた。 「なんのために、部屋に入れろって言ったと思ってんだよ」  少しだけ背伸びをして、その首の後ろに手を回す。 「え、万葉」 「目、閉じろって。恥ずかしいから」  ぱちぱちと瞬きを繰り返していた直輝の目が、優しげに細められた。 「そうか。よかった」  火照った頬を、直輝が指の背でするりと撫でる。 「好きだよ、万葉」 「あ。直輝……」  またしても、先を越されてしまった。自分からしてやろうと思った矢先に、優しいキスが万葉のそれ以上の言葉を塞いだ。
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