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セーターとインナーの裾を一度にたくし上げられた。冷たい空気に直に晒された素肌の上を、直輝のあたたかな指先が滑っていく。自分の体温のありかを強く意識させられる。
直輝が万葉の前に膝をついた。
「見せて」
有無を言わさぬような声。
「な……お、き?」
直輝は万葉の腰を抱きかかえるようにして、ベルトのバックルとジーンズの前ボタンを器用に外す。
「ちょ、なにっ」
臍の脇に手術の跡がすうっと斜めに伸びている。万葉は色白なので、引っ掻いたような赤い線が目立つ。
その線を直輝の指がなぞる。
「万葉。ごめん」
「……お前のせいじゃないって」
直輝は小さく首を振ったと思うと、万葉の手術跡に崇めるようなキスを落とした。
「え」
唇がゆっくりと傷の線を辿り下ろしていく。
「ひあっ……」
人に、そんな風に触れられたりすることのない箇所だ。初めての感覚に、甘い戦慄が背筋を駆け抜けた。
「やめ……直輝……」
ボクサーパンツのすぐ際まで直輝の唇が滑り落ちる。膝から下が震えて、立っているのも覚束なくなっていく。
「万葉」
不安定に揺れる腰を、直輝に両手で鷲掴みにされた。
「ちょ、待て、このやろ」
直輝のブルゾンの襟元を掴んで、渾身の力で引っ張り上げる。
「ずるいぞ。直輝のも、見せろ」
「俺の?」
「お前の手術の跡にも、同じことさせろって」
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