§11

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 セーターとインナーの裾を一度にたくし上げられた。冷たい空気に直に晒された素肌の上を、直輝のあたたかな指先が滑っていく。自分の体温のありかを強く意識させられる。  直輝が万葉の前に膝をついた。 「見せて」  有無を言わさぬような声。 「な……お、き?」  直輝は万葉の腰を抱きかかえるようにして、ベルトのバックルとジーンズの前ボタンを器用に外す。 「ちょ、なにっ」  臍の脇に手術の跡がすうっと斜めに伸びている。万葉は色白なので、引っ掻いたような赤い線が目立つ。  その線を直輝の指がなぞる。 「万葉。ごめん」 「……お前のせいじゃないって」  直輝は小さく首を振ったと思うと、万葉の手術跡に崇めるようなキスを落とした。 「え」  唇がゆっくりと傷の線を辿り下ろしていく。 「ひあっ……」  人に、そんな風に触れられたりすることのない箇所だ。初めての感覚に、甘い戦慄が背筋を駆け抜けた。 「やめ……直輝……」  ボクサーパンツのすぐ際まで直輝の唇が滑り落ちる。膝から下が震えて、立っているのも覚束なくなっていく。 「万葉」  不安定に揺れる腰を、直輝に両手で鷲掴みにされた。 「ちょ、待て、このやろ」  直輝のブルゾンの襟元を掴んで、渾身の力で引っ張り上げる。 「ずるいぞ。直輝のも、見せろ」 「俺の?」 「お前の手術の跡にも、同じことさせろって」     
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