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§2
大学と病院の最寄駅から、各駅停車で二駅。そこから万葉が借りているアパートまでは、商店街を抜けて徒歩五分。途中のスーパーで奮発してベルギービールを買う。ようやく飲酒にも許可が下りたので、一人ささやかに快気祝いをするつもりだった。
軽やかに澄んだ十月の大気と対照的に、狭い1Kの部屋は、閉めきっていたせいで空気が淀んでいる気がする。さっと窓を開けると、東の空にはランプを灯したような満月が浮かんでいた。空気を入れ替えてからカーテンを閉め、万葉は狭い台所に立つ。さっきから少し冷えるので、今夜はポトフでも作ろう。
退院後しばらくは、実家から母親が様子を見に来てくれた。ありがたかったが、高速を使っても片道三時間もかかるところをそう何度も往復させるわけにもいかない。
身の回りのことは自分でできるから大丈夫、と母を説得した手前、あまり家事に手を抜くわけにはいかない。大学に入って独り暮らしを始めた頃から、少なくとも料理だけはまめにやるようになっていて、母もその点は安心していたようだ。
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