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今まで己に誇れる特技といえば、弓、としか答えられなかったので、料理を特技にするのも良いかもしれない。料理は弓よりも、日常的に使えるものだし。
「特技にしたら、ユンジェは毎日私の料理を食べてくれるか?」
「当たり前じゃんか。作ってくれたら、俺はすごく嬉しいよ」
「そうかそうか。じゃあ、旅が終わったら、毎日ユンジェに料理を作ってあげよう。その時は、たくさん食べておくれ」
「たくさん食べられるためには、家と畑を手に入れないとな。ちゃんと仕事ができるところを見つけないと。じゃないと、ティエンの料理が満足に食えないし。まっ、腹いっぱい食えなくてもさ、ティエンの料理が食えれば俺、少なくてもいいや。ずっと俺に作ってくれよ」
子どもの可愛い頼みごとに、ティエンは何度も頷いた。そんなのお安い御用だ。
ふと、痛いほど突き刺さる視線を感じる。顔を動かせば、兵達が神妙な面持ちで自分達のやり取りを見つめていた。
「クソガキ。今の撤回すべきだと思うぜ。ずっと俺に作れ、はまずいぞ」
ハオの意見に、ユンジェは瞬きを繰り返す。
「どうして? 俺、ティエンの作ってくれる料理が好きなのに。王族だから?」
「いや、そうじゃなくてよ。ほら、ずっと俺に作れってのは、あれだあれ。家族になる奴同士が言う台詞で」
「ティエンは俺の兄さんだけど」
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