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「大きい方が守れそうだけど……ティエンが小さいままの方が良いって言うなら、このままでも良いかな」
本当は嫌だけど、ここはグッと我慢しよう。優先すべきはティエンの不機嫌を直すことだ。
「良かったですねぇ。背丈の心配をせずに済みそうで。五つも下の弟より小さくなるなんて、兄としての自尊心が傷つけられそうですし」
「カグム。貴殿、先ほどから私に言いたいことがあるようですが」
「いえいえ。ただ、思ったことを口にしているだけです。お気になさらっ、イッ」
故意的にティエンを煽るカグムの足を、前方からユンジェが蹴り、横からハオが踏みつける。物言いたげに見てくるカグムに、ユンジェとハオは目を細めた。
煽るなら、自分達のいないところでしろ、である。
「クソガキ。おかわりしても良いぜ。今度はいつ、宿屋に泊まれるか分からないしな」
「じゃあ俺、白飯のおかわりをしたい。カグム、おかわりしても良いよな?」
「……妙なところで息が合うよな。お前ら」
誰のせいだと思っている。
小声で毒づく二人の心は一つになっていた。
おかわりの許可が出たので、ユンジェはさっそく実行に移す。近くに宿の者がいなかったため、席を立って、調理場にいる宿屋の娘姉妹に声を掛けた。
先ほどまで会話していた人達なので、とても声を掛けやすかった。
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