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「あら、坊や。おかわりですか?」
「うん。白飯の追加をお願いしたいんだ」
すると、宿屋の娘姉妹が調理場に回ってくるよう手招いてくる。部外者の自分が入っても大丈夫なのだろうか? 疑問を抱きながら、調理場に足を踏み入れると、瞬く間に引き込まれた。
よろめくユンジェをしゃがませた姉妹は、揃いも揃って詰め寄ってくる。
「ねえ、坊や。お兄さん達のことを、ちょっと聞きたいんですけど」
「え?」
ひそひそ声につられ、ユンジェも声を小さくしてしまう。お兄さん達、とはティエン達のことだろう。
「お兄さん達、お酒は好きかな? 良ければ、振る舞いたいの。勿論、お代は私達持ちだから」
姉妹の敬語が崩れた。客としてではなく、一個人として聞いているのだろう。
「御馳走してくれるってこと? うーん、どうだろう。ティエンはたぶん、そんなに好きじゃないだろうけど、カグムとハオは聞いたことないな」
「じゃあ、聞いてきてくれないかな? もし、聞いてくれたら、坊やに水餃子を御馳走するから」
できれば、彼に聞いて来てほしい、と姉妹がカグムを指差す。
そういえばこの姉妹、カグムに見惚れていたっけ。なるほど、狙いは彼か。
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