【美味しいごはんと良い男】

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「だからって……そんな、おまけみたいに言われても」  苦笑いを浮かべるユンジェの両手を、姉妹達がしかと握ってくる。白飯の追加注文をするつもりが、困った事態になってしまった。なんでこんなことに。 「ユンジェ。何をやっているんだ。お前がいつまでも戻って来ないせいで、ティエンさまが落ち着きを失くしているぞ」  なんて好機だろうか。  ユンジェは調理場を覗き込んでくるカグムを一瞥し、「いま話しなよ」と姉妹を言い包め、後のことはすべて彼に押し付けた。  大体、事の元凶はカグムなのだから、彼がなんとかするべきことだろう。 「じゃあ、あとは頼むなカグム。お姉さん達、水餃子ありがとう」 「は? おい、ユンジェ」  白飯と水餃子の入った器を持って、とっとと逃げるユンジェは、無事に席に着くと三人でそれを分け合った。  ユンジェの様子で、おおよそ何が遭ったのか察したのだろう。ハオはこれ以上になく不機嫌になると、水餃子を大口で頬張る。 「はっ、これだから女って奴は。クソガキ、ティエンさま、明日から三人旅になると思うのでよろしくお願いします」  男の嫉妬はなんとやら。  二人は視線を合わせると、「カグムいなくなるって」「私は一向に構わんよ」と、軽く会話し、水餃子を口に運んだ。     
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