【褒められたいティエン】

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 幸せそうに粥を頬張る子どもの姿を見て、ティエンは自分に自信を持てるようになった。自分だってやればできるのだと、心から思えるようになった。  それの心地よさが忘れられず、ティエンは定期的に褒めてもらえるよう努力する。やればできるのだと自分を信じ、作業に取り組む。 「ティエンさま。御手に持っているそれをお放し下さい。汚いですよ」  それは野宿の支度をしている時だった。  たき火の準備をするべく、短刀で湿気た枝の皮を削いでいると、後ろから枝を取られた。振り返れば、勇気を振り絞ったであろうライソウが物申してくる。  王族の人間なのだから、寛いでおいてほしい、と言う彼を睨み、新たに枝を掴んで皮を削ぐ。 (私は何もできない人間ではない。なのに、王族という理由で作業から遠ざけられるなど冗談ではない)  手早く枝の皮を削いでいると、ライソウがカグムに告げ口をする。止めて欲しい、と頼んでいる様子。知った話ではない。ぶすくれながら、ティエンは枝の皮を削ぐ。 「ティエンさま。枝の皮を削いでも、なんの利点もございませんよ。枝で手が汚れたら如何します? おやめください」  カグムを一瞥し、視線を戻す。  何度枝を取り上げられても、新しい枝を拾って皮を削ぐ。兵達は呆れた様子を見せているが、ティエンは無視をし続けた。     
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