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と、水汲みからユンジェとハオが戻って来る。不穏な空気を察したのだろう。子どもは何か遭ったのか、と尋ねた。
ティエンが無意味に枝の皮を削いでいる事情を、カグムが説明すると、ユンジェは目を丸くした。
「ええっ? カグム。ティエンは、気を利かせて枝の皮を削いでくれているんだぜ? なんで止めるんだよ」
「気を利かせて?」
「そうだよ。集められた枝はどれも湿気ているだろ? これは今朝、雨が降ったせいだ。本当は乾いた枝でたき火をする方が良いんだけど、周りにはそんな枝はなさそうだから、ティエンは湿気た皮を削いでくれているんだ」
湿気たところを削げば、幾分火種もつきやすくなる。
それを教えてくれたのは誰でもないユンジェである。ティエンは忠実に、その教えを守っているだけなのだが、子どもは「気が利くなぁ」と言って、ティエンを褒めた。
くすぐったい気持ちに駆られる。悪い気はしない。
「ユンジェ、ティエンさまを止めてくれないか? 王子が落ちている枝の皮削ぎなんて、品位が下がるんだが」
「そんなこと言ったら、ティエンのやることが無くなるじゃんか。カグム、前から思っていたんだけど、何でも王族、王族、王族で、ティエンを作業から遠ざけるのは良くないよ。ティエンはやればできるのに、何もできなくなるじゃんか」
「けどなぁ」
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