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「……ティエンさまが飯を作る、ですか?」
「そうだ。何か文句でも?」
ある日、ティエンは野宿の支度を始めるカグムらに、こんなことを申し出た。
予想はしていたのだが、当然のようにカグムは危険を理由に却下をくだす。王族が料理を作るなんて言語道断。ティエンならば、兵の食事に毒を入れそうだ、と進言した。
それについては否定はできないものの、ティエンも譲らなかった。どうしても、今日は己が炊事を担当したかった。
できないのなら、勝手に向こうでたき火を作り、自分で飯の用意をする。そう主張し続けると、根負けしたカグムが見張り付きで許可を下す。
構わなかった。ティエンはこめかみを擦っているカグムの隣で、てきぱきと準備。芋を湯がき、煮えたものを取って、皮を剥く。それを大きな葉に包むと、木の棒で軽く叩いた。
「……食えるもんが出来てくれるといいけどなぁ」
なんぞとカグムが言ってくるが、喧しい、と突っぱねたい。
これは兵のためでなく、子どものために拵えているのだ。カグムの意見などどうでも良い。
ちなみにユンジェは、向こうで一生懸命に草紐を編んでいる。今後の旅に備え、小道具を充実させようとしているのだろう。
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