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ガタンッ
「いったー……」
充は額を擦りながら辺りを見回す。そこは自分の部屋で、机の上には1千300万円と汗でできた小さな水溜りが出来ていた。
「夢か……」
安堵した充は喉の渇きを覚え、ふらふらと台所へ行って水を飲み干す。
「坊っちゃま?」
驚いて振り返ると執事の島谷がいた。
「どうかなさいましたか?」
「いや、少し喉が渇いてな……。ところで島谷、うちの使用人は何人くらいいるんだ?」
「使用人ですか?はて、ざっと100人程ですかな。しかしそれがどうかしましたか?」
「いや、なんでもない」
充は自室に戻って寝た。
翌日、充とその兄弟は父親に呼び出された。
上から義久、勝、充、そして末っ子のヒナタだ。
「お前達を呼び出したのは他でもない。お年玉は何に使うんだ?」
長男の義久は様々な団体に寄付、次男の勝は将来会社を立ちあげるための足しにするという。
「充は?」
「うちの使用人達にひとり50万のボーナスとして渡します。ついでにそれぞれに1週間ほどの休暇をあげてください。残りは貧しい国に寄付を」
この答えに父も兄弟も驚いて充を見る。
「おいおい、どうしたんだよ」
「世界滅亡か?」
「ミツ兄、ゲーム買わないの?」
兄弟は口々に言う。
「いやぁ、必要ないお金を振りかざすとろくな事にならない気がするといいますか……。ほら、悪銭身につかずっていうし?あはははは……」
充の言葉に父は涙を流した。
「立派になったな、充……。父さんお前のことどうしようもない厨二病末期で更生施設にでも送らないと行けないかと考えていたがその心配はなさそうだ……」
父の言葉に冷や汗がタラリと垂れ流れる。
「偉いぞ、充」
「見直したよ」
「ミツ兄えらーい!」
兄弟も充を褒める。
この後充が使用人達に感謝され、神のように崇め立てられたのはまた別の話。
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