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「…だよなぁ。
亜須斗が好きだって、前から気づいてたよ」
嘘をついた。
本当は奈々が亜須斗を好きだと全く気づいていなかったが、直前の視線で察し、見栄を張る。
「おい、そこのバカ!」
「バカ…」
いつの間にか立っていた忍を苦笑しながら見上げたあと、ゆっくり立ち上がる亜須斗。
「そいつ、泣かしたら許さねぇからな」
「ああ。
これからも俺が守るよ」
自分に言い聞かせるように返事をする。
忍はそのまま立ち去ろうと歩き出す。
それまで黙って俯いていた奈々が顔を上げ、声をかける。
「…忍!」
振り返らずに立ち止まる忍。
「…ありがと…
ありがとう、忍」
何も言わず、ベンチに置いていたカバンを持って静かに忍は立ち去った。
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