お年玉

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しばらく歩いて端の方に着くと、絵本の中から飛び出してきたような少し怪しげな黒いテントが外にあるのが見えた。 「ねー、あれ」 絵里奈がテントを指さす。 「面白そう!行こう!」 「ちょっと……!」 満里奈は絵里奈の腕を引っ張って外にあるテントまで走った。 「「うわぁ……」」 テントの前に立つと、ショッピングモールの中から見た時より大きく感じた。 「なにかな、これ?」 「なんだろうね?お店かな?入ってみよ」 ふたりがテントに入って最初に視界に入ったのは不釣り合いなシャンデリア。 そしてそのシャンデリアに照らされるのは天然石のアクセサリー。 「おや、いらっしゃい。可愛らしい双子さんだねぇ。ゆっくり見ていくといいよ」 声の主はこれまた絵本から飛び出してきたような黒いローブを身にまとった女性だ。 「「こんにちはー」」 「ふふっ、息もぴったりだね。ところでなにかお探しかな?」 ふたりは同時に首を振る。 「なんのお店かと思って」 「気になって」 「来てみたの」 「「ねー」」 息ぴったりのふたりの会話に驚く女性。 「本当にすごいねぇ。そんな息ぴったりなふたりにこれなんてどうかな?」 女性が黒いトレーに乗せてふたりに差し出したのは同じデザインのブレスレット。 淡いピンクと水色のストーンが交互に並び、その間にはシルバーのロンデルが挟まっている。そして透明の勾玉がぶら下がっている。 「「わぁ、可愛い」」 「ふふっ、ありがとう。頑張って作った甲斐があったわ」 女性は微笑ましくふたりを見る。 「これ、いくらですか?」 「4444円よ」 女性の言葉を聞き、ふたりはポチ袋をあけた。 父と母、それぞれ5000円ずつくれたらしい。 「どうする?絵里奈」 「どうする?満里奈」 「「あ」」 ふたりはお互いの顔を見て笑い、そして……。 「「買います」」 「はい、まいどあり」
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