4人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
悠太を待たずに先に出た。
何せ俺には一週間ぶりの外出だ。
逸る気持ちは勿論だが、久し振りに晴れた清々しい風と光を体に受けてゆっくりと歩く。
長雨のせいで鈍っていた体も心もほぐす様に。
一度立止まり、草木の緑、揺れる綻んだ花の色、漂う匂い…体いっぱいに吸い込み、ぶるりと全身を震わす。
いつものように俺を待っているであろう彼女を少し思い浮かべて一歩踏み出した。
見上げ先に静かに佇ずむ凛。
空を見上げる横顔を見つめた。
気付いたのかピックと肩を震わせ辺りを見渡す。
『虎鉄』
久しぶりの凛の声に体がゾクリと震えた。
最初のコメントを投稿しよう!