第7章

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「倉橋……」 「ずっと考えたんだ。もう友達にも戻れないって意味かとか、キス……してみて分かったけど、男とはそれ以上出来ないって思ったのかとか。考えて、考えて……落ち込んでたんだけど、西森くんが、」  伏せられていた城築の顔が西森の名に反応して上がった。その唐突さに息を飲む。 「やっぱりあいつがいいのか? あいつと付き合うのか?」 「違う! そうじゃなくって……『なんで聞かないの?』って。ひとりで考えてないで『ごめんってどういう意味?』って聞くべきだって言われて、そうだなって思った。聞くのは怖いけど、聞かないまま終わるのは嫌だ。僕は……あの頃から変わらずずっと城築のことが好きだ。触れないままでも良かったけど、この間触れたらもっと欲しくなった。ずっとそうしたかったのは僕のほう……城築が男同士で付き合えないって分かっても諦められなくて、ずっとずっと好きだった」 「倉……橋」 「どうしても駄目? 城築にはもうあの頃の気持ちはないかもしれないけど、少しでも好きって気持ちが残ってたら……」  無茶を言っている自覚はある。けれど、全てをさらけ出して本気で願えというのなら、少しでも可能性があるというのなら、諦めない。自分自身の全てを賭けて願うのみだ。 「……違うだろ?」 「え…………」  掠れ声で城築に違うと言われても、なんのことだか分からない。立ち上がり円の前まできた城築は、そこに片膝を立てて座った。 「倉橋が怖がったんだろ?」 「なに……?」 「あの、高三の夏休みあけの公演のあとで隣を見たら倉橋が紙みたいに真っ白い顔してた。俺と同じことでショックを受けたのが分かったよ。だから……いくら好きでも手に入れちゃいけないんだって思って、距離を置いた。凄く辛くて何度もやめようと思った。俺が一生守るからって言ったら付き合えるかな、とか……考えてみたけど、誰かを守れるだけの力なんて持ってなかった。そしたら倉橋が外部の受験するって聞いて、本当に俺と離れたがってるんだって分かったから」
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