第4章

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 わざわざ実家を訪れたのは、二次会の余興のひとつとして考えている、家族からのコメントを貰うことが目的だった。ふたりの生い立ちを紹介するための写真やエピソードの聞き取りもそうだ。城築が同僚の式で良かったからと二次会での上映を提案し、自らその係として名乗りを上げた。カツヤと新婦には当日まで見せないことになっている。  城築の盛り上げが上手かったせいだろう。予定より一時間ほど余分に時間が掛かったが、楽しいVTRが作れそうなエピソードが集まった。 「夕飯を食べて行きませんか」  カツヤの妹が誘ってくれたが、城築は丁重にそれを断った。見上げる視線に落胆が滲んでいるのを城築も知らないはずがない。けれど、全く取り合わないままカツヤの実家を辞した。彼女がいるのだから当然といえば当然のことだ。人事なのに、円はカツヤの妹に自分を重ねてひっそりと胸を痛める。 帰り道は下り坂で、夕暮れ時に近づいた空のグラデーションが正面に広がっていた。 「お疲れさま」 「疲れたのは城築だろ……」 「俺はしゃべってただけだし。倉橋が手際よくやってくれたから助かった」  写真を取り込んでコメントをメモしていくのはそれほど難しいことじゃない。城築が聞き上手だから引き出せた話がいくつもあった。それは円では出来なかったことだ。 「やっぱり相棒は倉橋がいい」  澄んだ空気に混じりゆくその言葉を円は切なく聞いた。大切な友人だという意味で言ってくれているのは十分に分かるけれど、友人以外にはなれないのだという宣言とも取れる。今更期待していないつもりで、小さなことにまた傷ついた。
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