第4章

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*  乗車する客が作る列の最後から、城築と円は滑り込むようにして電車に乗りこむ。ターミナル駅で待ち合わせていると嘘をついたせいで、そこまでは城築と一緒に移動することになった。  後から乗り込んできた人に押し出されて、円だけが左右のドアの中間付近に立つ。捕まる場所もなく不安定だが、城築と離れたことにほっと息を吐いた。偶然でも城築と密着する状況は避けたい。簡単に恋を繰り返す円の自衛手段だった。  ガタガタと小さく揺れながら電車が走り出すと、嘘のせいで降りることになったターミナル駅で書店にでも寄ろうかと考える。一時間ほどぶらついて帰れば、万が一にも城築と鉢合わせすることもないだろう。  そんなことを考えている背中で人が動いた。体勢が悪いのかごそごそと動いているのを感じる。その度に円の背中や腰にその人物の身体が当たって不快だった。朝のラッシュほどじゃないけれどこれだけ混雑していれば仕方ないと、円は軽く眉を顰めるだけで我慢する。  ふうと小さく息を吐いた時だった。 「倉橋!」  ちょっとすいませんと城築は強引に人をかき分けて円のところまで来ると、するりと立ち位置を入れ替えた。その時に真後ろにいた人物と目が合う。小柄な中年男性は円と視線がぶつかるとすぐに顔を背けた。それだけでは何の根拠にもならないけれど、あの接触は意図的なものだったかもしれないと猜疑心が湧く。 「大丈夫か?」  気遣う声を円に掛けたことで、城築の行動を迷惑そうに見ていた人たちの顔から剣が消える。体調が悪いことにしておいたほうが良さそうだと考え、小さく「大丈夫」と返すに留めた。  次の駅に着いたところで、円は城築と共にホームに降りる。人々が慌ただしく歩き去るその場所で、城築はもう一度「大丈夫か」と聞いた。
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