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同じクラスで名簿が並びだったという接点からふたりの付き合いは始まった。
入学したてで知り合いの一人もいない円は、早々に友人が出来たことを喜んだが、その友人が並みの男じゃないことに気づいたのは一か月が過ぎた頃だった。
成績も、運動能力も、人に好かれる人格も、周りより頭ひとつ背が高いせいで年齢よりも大人びて見える容姿も、何もかもが城築は飛びぬけていた。
比べて円はどれを取っても平凡で、人付き合いだって得意なほうじゃない。特にここ二年ほどはこの高校に入学することを目標に勉強にばかり時間を費やしてきたせいで、流行りの音楽にもゲームにも芸能人にも疎く、城築の周りに集まる熱量の多い友人たちに気後れしてしまう。
城築の腰ぎんちゃくだと揶揄されているのはすぐに気づいた。自分が釣り合わないことを承知で隣に居られたのには理由がある。
「倉橋、行こ」
「うん」
放課後、城築は円と連れ立って囲碁クラブに行く。運動が得意で体格の良い城築はあらゆる運動部に誘われていたが、そのどれにも属さずに円の選んだ囲碁クラブに入った。付属の大学に九割が進学する円たちの高校は、入試こそ熾烈だが入ってしまえば呑気な校風だ。運動部も大した成績を上げているところは無かったし、文化部に至っては三人以上いれば好きな名目で集まることを許された。
円は幼い頃から祖父に習った囲碁くらいしか趣味がなかったから、そこに入ろうと思っただけだ。でもまさかそこに城築がついてくるとは思わなかった。
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