第4章

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 囲碁クラブに入ったと城築が言うと、クラスメイトたちは勿体ないと口を揃え、掛け持ちでいいから自分のいる運動部に入って欲しいとかき口説いた。けれど、城築はうんとは言わなかった。 「昔から運動はそこそこ出来るけど……負けん気が足りないらしくて、決勝だとか、負けたら終わりだぞとかなってもチームメイトと同じように盛り上がれなくってさ。中学の時にそれを思い知ったからもういっかなって」  誰にも言えないけどと、言い訳しながら城築は打ち明けた。円にだけ打ち明けてくれた秘密が嬉しくて、当時きまぐれでつけていた日記に書いたことを覚えている。円が城築といて楽しいのは言うまでもなかったが、城築のほうでも何故か円を気に入ってくれていた。 同じ時間の電車に乗り合わせるようにして登校し、クラブ終わりに一緒に帰るから、本当に一日中を城築と過ごす日々だった。  その朝も途中の駅から乗り込んでくる城築に合わせ、一旦ホームに降りて合流すると再び電車に乗り込んだ。通勤ラッシュの時間帯故に身動きが取れないほどに混みあっている。城築と合流するまでに三駅、もみくちゃになりながら運ばれてきたところだった。 「調子悪い?」  様子のおかしい円に城築が聞いた。 「えっと……悪くはない?」 「なにそれ」  城築はいぶかし気に眉を顰めたが、どうしても言いだせない。人数に反比例して静まり返る車内でいくら声を潜めても周りに響いてしまうからだ。  円も気のせいだったと思いたかった。自分の臀部あたりでもぞもぞと動くそれが尻に当たるのも、たまたま荷物を持ち変えようとしているせいだとか、足場が悪くて身じろぎしているだけだと。城築と合流したために一旦ホームに降りて立ち位置も変わったのに、それはまだ続いている。そこまでくると痴漢という言葉に現実味が帯びてきた。
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