5人が本棚に入れています
本棚に追加
話は単純で、私は婚期を逃していた。
雪野彩香(ゆきのあやか)。32歳、独身、彼氏無し。OL、借家住まい。
私のプロフィールは、ざっとこんなもの。
お見合いや、その他の結婚活動をしようにも、これと言ったアピールポイントを持っていない。
職場恋愛も一度は考えたけれど、今はもう無理だ。
入社したての頃は上司や同僚からアプローチされたが、20代後半を過ぎた頃から誘いは急に減り、30代を越えると全く誘われなくなった。
別にそれはそれで構わないのだけれど、やっぱり寂しい。というか、虚しい。
私の取り柄は若さしかなかったのか?積み重ねてきたものは無かったのか?
自問自答も殆どしなくなっている。
それでも、この季節になると意識せざるを得ない。
この季節とは言うまでもなく、
12月24日・12月25日、聖なる夜、クリスマス・イブとクリスマス。
である。
その日が近付くと、段々と憂鬱になっていく。
バレンタイン・デイは難無く乗り切れる。
バレンタイン・デイは女性が攻め手側で、圧倒的に有利なのだ。
誰にもチョコを渡さなくても、それは好きな人がいないからですよ、と言える。
女性同士でチョコを交換する事も出来るし、処世術としての義理チョコという逃げ道も用意されていた。
雛祭りには母親から電話がかかってくるが、都市部ではあまり意識されていない。
だけれど、クリスマスにはいかなる逃げ道も用意されていないのだ。
一人で過ごすクリスマスは32歳の肩には重すぎる。
今日はまだ21日。それでも憂鬱は私に纏わり付く。
最初のコメントを投稿しよう!